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肥満治療について
肥満の治療には、食事療法、運動療法、行動療法、認知行動療法、薬物療法、外科療法などがあります。 体重を減らしていくことは、理論的には難しいことではありません。 エネルギー摂取を抑え、エネルギー消費を増やせばよいからです。 それは現在でも、商業ベースを含め数多くのダイエット法がその成功を宣伝していることからもわかります。
しかし、これらのダイエット法の効果は一時的であり、数年のうちには確実に元の体重に戻っているという事実はあまり知られていません。
概して落とした体重の1/3は1年以内に戻り、3-5年以内にそのほぼすべてが元の体重に戻ると言われています。 これは全ての非外科的治療に当てはまり、それらを複数組み合わせてた場合も同様でした。 これらの事実は、減少した体重を維持することがいかに困難であるかを物語っています。
したがって、現在の肥満治療の最大の課題は、この減量後の体重をいかにして維持するか、あるいは再増加(リバウンド)を防ぐかにかかっているといっても過言ではありません。
なぜ心療内科で肥満を治療するのか
心療内科とは、「心身一如(=心と体は互いに密接に関わりあっており、切り離すことはできないという意)」という考え方をもとに、ストレスが発症・増悪のきっかけとなる疾患(=心身症)に対して心身両面からのアプローチにより治療を行っていく専門科です。
肥満につながる体重増加の始まりや進展には、直接的には、不健康なライフスタイル(食べ過ぎ、食生活の偏り、運動不足)などが関係していますが、その背景には、ストレスやストレスへの不適切な対処が潜在していることが多いです。たとえば、「嫌なことがあったからやけ食いをする」「運動不足と分かっていても、体を動かす気力もない」といった具合に・・・。
さらに、肥満に関連する多くの疾患(高血圧、糖尿病、虚血性心疾患)なども、ストレスにより悪化することが多くの研究で報告されています。
肥満症を治療するには、単に体重を減らすための食事や運動の指導(=身体面からのアプローチ)では不十分で、不健康なライフスタイルと切っても切り離せない心理的側面(適切なストレス対処法、不適切な思考パターンなど)にも十分に焦点を当てることが重要です。肥満症はまさに心身症の一疾患ととらえることができ、我々心療内科の得意とする心身両面からのアプローチが不可欠な疾患なのです。
当科での臨床研究について
九大病院心療内科では、肥満症患者を対象に、減量とリバンド防止を目的とした臨床試験を実施します。平成30年3月開始を予定しています。
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